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2018年3月10日 (土)

終わりを願ってもいいですか?

近藤史恵「スティグマータ」。

…思えば私、このシリーズは「エデン」から読んで、その感想は上げたけど、一番肝心な「サクリファイス」の感想を上げてない(苦笑)

あれは、とてもとても痛くて、痛くて、それを突き抜けて美しい小説です。タイトルの意味が分かるのは本編の一番最後だけれど、その瞬間に、とても鋭くて済み切った色の刃物が、心臓の真ん中に突き立てられる気がします。そこから流れた真紅の血のような小説。主観に入り過ぎて意味不明な文章になってますが、そこはご容赦を。「サクリファイス」のレビューではないので。

「スティグマータ」の話にいきましょう。

「サクリファイス」の冒頭では23歳だったチカが、今や30歳。肉体的な衰えを意識する年齢になり、キャリアの終わりがちらつき始めている…と思うと、気が遠くなりますね。「エデン」に出て来たニコラとミッコも再登場。それから伊庭ちゃん(何故か、私の中ではちゃん付け)がヨーロッパ上陸。舞台は今度もまた、ツール・ド・フランス。まあ、そうでしょうね。一度ツールを書いちゃった以上、あれ以上の舞台はもう無いから。今更ジロ・デ・イタリアでもあるまい(苦笑)

というのは余談中の余談として。

日本的な感性でいくならば、チカはミッコのアシストとして忠誠を尽くして、キャリアを全うすればいい。でも、実際には今回、2人は別のチームでツールを戦います。チカのエースは、今度はニコラ。伊庭ちゃんはまた別チームです。私はこのシリーズを通してしかサイクルロードレースというスポーツを知らないけれど、多分これがリアルなんでしょうね。このシリーズ、08年のツール・ド・フランス中継時にアナウンサーから紹介されたそうなので、通な人が読んでも面白いでしょう。

相変わらず、白石誓という男は、根暗で苦労性な上に不幸体質で、いつも何の過失も無いのに厄介事に巻き込まれる、「要らんものを持っている」男です。

そして、ちょっとネタバレを許して頂けるなら、彼はまた今回も、「取っていい」と言われた勝利をかなぐり捨てます。

だけど、ちょっとだけいいこともある、かもしれない? 的なエンディングを迎えます。

このシリーズ、これで終わってくれないかなと、思ってしまいました。

そうしたら、私、頭の中でチカのささやかな幸せを補完して、気持ちよく眠りにつきますから、と。

作中の時間経過を考えると、続くとしても次が最後でしょう。チカのキャリアの終わりの話か。ヨーロッパを去る話なのか。もしかしたら彼が最初で最後の一勝を上げる話…とか思ったけれど、それをやっちゃったらチカじゃないのかな。最後なら許されるかな。

でも…でも、その展開だと、絶対ヒルダとは「ちょっと付き合ったけど結局別れました」になってるから(涙)

何たって、彼はチカだから(苦笑)

いや、何だかんだ、ロードレーサーとして全うすることが、彼の本望だと思いますよ。そうやっていつか、石尾さんから継いできたものを、誰かに引き継ぐ日まで走り抜けることが。

でも、ここまで3冊、彼の不幸体質に付き合ってきて、情が移った私が居まして。

あのチカが、伊庭ちゃんなんか階段から蹴落としてやるって言ったんですよ! これはハッピーエンドにしなきゃ駄目でしょう! と、つい思ったんです。

それはそれで、チカじゃない気がするんですけどね。

でも、ごく素直に、そう思った。

思ったんだよ、チカ。

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