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2017年12月16日 (土)

天涯無限…どこが?

というわけで、「アルスラーン戦記」完結編の感想です。

タイトルはとりあえず「ええっと、内容の何処がこのタイトルにあたりましたっけ? とってつけたようなあのシーンですか?」ということで。

以下、ネタバレは考慮無しで毒を吐きますので、悪しからず。

ひとまず、最終決戦終了時点での死亡者と生存者のリストを挙げます。

【死亡】
アルスラーン、ダリューン、キシュワード、クバード、メルレイン、イスファーン、ジャスワント、パラフーダ、ルーシャン、シェーロエス、タハミーネ、レイラ、ザッハーク、尊師、グルガーン、ギスカール、フィトナ、ヌンガノ、ブルハーン

【生存】
エラム、ギーヴ、ファランギース、アイヤール、ナスリーン、パリザード、オフルール、パトナ、クーラ、ユーリン、カーセム、ヨーファネス、ラジェンドラ、サリーマ、オラべリア、グーリイ

【どこ行った?】
アズライール、カイヴァーン、パラザータ、パティアス、ルッハーム

…アズライールが途中で消えました。探したけど見つからない。カイヴァーンはイスファーンが居なくなった時点で存在意義をほぼ失うし、パラザータとパティアスはどうでもいいと言えばそれまで。ルッハームはそもそも出てこなかったけど、この人ヨーファネスとコンビじゃなかったのだろうか。

さておき。

田中氏は作家としては死に体だと、ずっと前から思っているけれど、やはり何を読んでもそう思えるな。筆力が、悲しいくらい落ちている。結局この人は「銀英伝」を越えられずに終わるみたい。

初期の代表作が即ち最高傑作になってしまうのは、ままあることですが。この人の場合は、「アルスラーン」といい「創竜伝」といい、どのシリーズも最初は勢いがあって面白かった。そして、途中で投げ出されてがっくりとパワーダウンした。その成り行きが罪深いと思う。

「アルスラーン」も、例え同じ内容でも、九巻の後の大中断が無く、コンスタントに書かれてあと十数年早く完結していたら、まったく違った印象の物語になっていたでしょう。

「銀英伝」の何が凄いって、キャラをどれだけ殺しても、みんな何かしらの「死に花」を持って逝くことなんですよ。そこに、そのキャラの精髄が集まるような死に方をする。ロイエンタールのように劇的な最期もそう。黙って静かに散ったマシュンゴもそう。

だから、あのキャラを殺すなとか、そういう感想は抱きません。

私は未就学の頃からガンダムシリーズで「皆殺しの富野」と付き合ってきたから、キャラとのお別れには強いです(苦笑)

ただね、これだけの数をきちんと捌ききるのに、やはり筆力が足りない。圧倒的に足りない。全編ほぼ戦闘シーンなのに、迫力がまったく無い。若い頃、九巻のコートカプラ城のシーンを何度も読み返して、迫力ある戦闘シーンとは…と色々書いて練習したことを、懐かしくも悲しく思い出しました。

みんな、そこそこ「らしい」最期を用意されてはいるんだけど、書ききれていないゆえに、紋切型な印象に堕ちてしまうんです。テンプレは決して悪いことではありません。ハマったらこんなに感動出来るものは無い。逆に言うと、だからこそ使い続けられて、テンプレになれるんです。ただ、そうやって陳腐化したものを、改めて納得感のある形で書くのは、とても難しいことなんです。

あと、皆殺しに近いエンディングの英雄伝説は古今東西多々あるんだけど、「ニーベルンゲンの歌」も「アーサー王」も、栄光のピークって無いんですよね。「アルスラーン」は「王都奪還」があまりに輝かしく綺麗に終わっていたから、そこからの落差が辛い。

夫は私ほど作品に愛着が無いから「ヨシキは死んだ、もういない!」とか「十巻以降を書いたのはヨシキMk-Ⅱってことで。こうやって言うとパチモノっぽいだろ」とか、凄い毒を平気で吐いてました。そうやって笑い飛ばしたい気分は分かる。

あ、最後に。私は今、pixivでダリューンの物語を書いています。それでなくても、彼のことはこの四半世紀、ずーっと愛してきたから。色々、感慨深いものはありました。

そうだよね。貴方には、やっぱりその最期なんだよね。「おつかえできて幸せでございました」。それなんだよ、とは思った。だからこそ、もっと上手く書いて欲しかった。

この期に及んで戟を振り回してたのは、田中氏が荒川版を読んだからでしょうねー。あれ格好良かったから。でも、実際にはダリューンが戟を使ったのは三巻で一回だけなので、唐突感はありますよ。

そして。最後の夜に、彼は絹の国の思い出話をしていました。やっぱり、あれは彼にとって、特別な経験だったんですよね。口にはしなかっただろうけど。その記憶の中で、貴方が忘れられなかった人は、笑っていましたか?

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コメント

辻元さんこんにちは !Pixivからこちらに見に来てしまいました。
私や子供にまでお気使いくださってありがとうございます。辻元さんやお子様は大丈夫ですか?
アルスラーン戦記16巻の感想書かれているかな、って思って覗きました。そしてやはり決戦前夜のダリューンの話に言及されていて嬉しかったです。語っていたダリューンもそれを聞いていた面々も、「やっぱり絹の国の姫君と再会を夢みてたのかなあ」と思わせるシーンでした。私には、アルフリードが想いを遂げたこととダリューンが絹の国を忘れなかったことが15・16巻の存在意義です。
我が夫の感想は「全部アルスラーンの夢でした、にしたらよかったのに」でした。その方が救いがありますね。
荒川版アルスラーン戦記8巻でダリューンが絹の国に護衛団として行っていたことを話すシーンがあるのですが…
私はダリューンの表情や一言で妄想が爆発しました(笑)私に文才があったら2次創作で書きたいくらいです。
その話もいつか聞いてください。
初めてのコメントで長文失礼しました。アルスラーン戦記好きとして、働く母として(ちなみに子供は4歳と1歳です)応援してます。これからも作品楽しみにしてます。曲イメージも少しずつ読んだり聞いたりしていますよ。

おはぎとだいふくさん、いらっしゃいませ! こちらにまで来て頂けて嬉しいです。
お陰様で、私の方は体調は特に問題なく、子供(2歳です)も月曜から元気に登園しています。
お気遣い頂いてありがとうございます。

15巻・16巻の存在意義は、私もその通りに思います。あと15巻で言えば、トゥース家三姉妹がダリューンを称して「独身なのには訳がありそう」と言っていたのも印象深いです。傍目に、まだそう見えるのかな、と。

アルスラーンの夢だったら…目が覚めたらアトロパテネの霧の中に居たとか。目が覚めたら第二部開始のところだったとか。色々なパターンを考えてしまいました。いかに甘ちゃんのアルスラーンでも、すべてを知っていれば、もっと辛辣に動いて、彼の大事な人たちを守ったでしょうね。

荒川版8巻のシーンは私も読みました。荒川版は、私にとっては「ちょっとノリが違うかな」と思うことも多いのですが(それはそれで初年漫画として面白いですが)、あの一コマは良かった! そのうちお時間がある時に、ぜひお話聞かせて下さい。

おはぎとだいふくさんは、働く母の先輩でいらっしゃるのですね。二人育児、私には想像もつきませんが、きっとお忙しいですよね。私の書いたものが、そんな毎日のちょっとした気晴らしになってくれれば、これ以上に嬉しいことはありません。「アルスラーン」以外の作品も読んで下さっているとのこと、本当にありがとうございます。

今後とも是非、よろしくお願い致します。

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