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2017年5月 8日 (月)

繋いでゆくことの物語

上橋菜穂子「獣の奏者」。

これは、久しぶりに響きました。

仕事の昼休みを中心に読んでいて、時間が取れないのでどうしても熟読は出来ないんですが、それでもぐーっと何か込み上げてくるものがありました。

これは、「繋ぐ」ことの物語なんですね。

命を繋ぐこと。知識を繋ぐこと。その二本の糸を丁寧に縒り合わせて「思いを繋いでゆくこと」という、一本の太い綱、物語が出来上がる。

そのすべてが重なる結び目に、ジェシが立っている。だからエリンは「すべてが報われた」と言えるんです、きっと。

「ガンダムUC」に、ちょっとだけ似てます。

でも、決定的に違う。「UC」は、そもそも「かつてガンダムを観て、今は親になっている大人」に向けて書かれたファンタジーなので、どうしても「親と子」というところに焦点を絞ります。あと「ガンダム」だから、人類の進化に絡めますよね、どうしても。

エリンが繋ぎたいのは、自分の命だけじゃない。王獣が端的にそうだけれど、この世の生きとし生けるものが、あるがままに命を繋いでいくことが、彼女の夢だった。それと、彼女は学ぶ人だったから、たくさんの知識を継いでいたし、それを誰かに繋ごうとした。

そんな彼女の生き様から思いを汲み取って、ジェシはその後を生きた。多分、そんな人が他にも居る。セィミヤが多分そうだし、エサルもきっと。

そうやって、すべては繋がってゆく。

そういう物語なのだと思います。

言葉の連なりそれ自体が、とても独創的で印象深い書き方、というのがあります。それから、シンプルに語っているけれど、今まで知らなかったことが書いてあって、目を開かれる書き方も。

でも、私が一番憧れるのは、言われれば分かるようなことを書いているのに、「知ってるよ」じゃなくて「そうだよね」と言える物語。納得して、湧き上がる思いを静かに噛み締めるような物語。

これはまさにそのものです。最後、視点がジェシに移ってから、何でこんなに淡々と描いているのに、こんなに泣きたくなるんだろう、とずっと思っていました。

あと余談ですが、私はセィミヤが好きです。深窓のお嬢様が、良い意味ですれっからした政治家になっていく様子が。エリンとイアル、セィミヤとシュナンという、二組の良い夫婦を見比べながら読むのも、何気に楽しかったです。

あと、男の子母としては、ジェシが出てくるシーンは全部愛しくて、全部ちょっと辛かった。

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