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2010年6月11日 (金)

私は静かに怒っている

うちの会社で今日起こった揉め事。

同僚の1人が、出産退職することになっていました。最終的な退職日を調整中だったため、まだ辞表は出ていませんが、代替要員も入社して、既に働いて貰っています。その彼女が、突然今日になって「1年の産休をください、くれないなら労働基準監督署に訴えます」と言い出しました。

要するに、彼女の目論みは「産休の取り逃げ」です。産休期間中は、労使ともに費用の負担無く保険への加入を続けられますし、給与総額の半額にあたる給付金を受けられます。この金額は非課税になるため、彼女の給料ならば、扶養控除の範囲を超える金額(要するに、扶養の範囲内でパートなどの働き方をするよりもワリがいい金額)を、働かずして手に入れることが出来ます。

復職の意思はもとより無い、と彼女は断言しています。そもそも結婚当初から、家事との両立が大変だし、こんな会社やめてパートで働く、というのが、気に障ることがあった時の口癖でしたから(因みに、第一希望は専業主婦だけど、経済的に有り得ない、とのことです) 宝物の第一子ですし、なるべく手をかけたい、というのも確かに本音だと思います。

なので、本来であれば、産休の手当てではなく、失業保険の給付を受けるべきケースなんですよね。ただ、この場合は給付期間は3ヶ月ですし、出産退職の場合は申請を1年延期する形になるので(失業保険の給付はあくまでも再就職支援という趣旨なので、本来であれば産休を取っている期間が過ぎてから、という意味です)、総額として見れば話にならない差がつきますし、1年後には既にパートの口でも見つけているかもしれません。そうしたら何も貰えないわけです。

ところで、最終的な退職日を何故調整していたかというと、出産時に在職であれば、国から出産手当金が出ます。なので、彼女の希望では、臨月ギリギリまで働いて、後は有給を消化して、何とかこの手当金を貰いたい、という話でした。それを許すか否か、許すなら本当にいつまで来て貰うのか、何かのトラブルで有給が足りなくなった時の扱いや何や、本当に色々、調整することがあったわけです。

彼女は頼りになるベテラン社員で、気立ても面倒見もよく、非常に惜しまれての退職でしたので、会社側も、前例になるのは承知の上で、多少は我儘も聞こう、という展開になっていたわけですよ。

そこに来てこの態度かい、という。

正社員で働いていた奥様が失職する、ということは幾らの収入減になるか、リアルに分ってはいますし、彼女の口から、ご主人の収入に不安がある、と聞いたこともあります(正規雇用の定職だけど薄給、という話でした)。だから、貰えるお金は全部欲しい、という気持ちは分る。

分るけど、「取り逃げ」の前例は作って欲しくない。

産休は、あくまでも復職を前提にした制度です。社会保険事務所についでがあった際に「産休を申請したがっている社員が居るが、もし万が一、子供の預け先が決まらず、復職出来なかったらどうなるのか?」と聞いてみたところ「やむをえないケースではあるが、制度上望ましくない」との回答を得ました。そんなところでしょう。

プラス、ここは田舎で、私の勤務先には出産退職の慣行があります。何よりも、いつまでどうやって働き続けるかは、その人自身の選択肢ですから。誰もが、出産後に復職したいわけではない。

何が言いたいかと言うと、今後取り逃げ退社する社員が相次ぐ危険性があるわけです。そうなると、社会保険事務所から会社がマークされ、指導などを受ける恐れがあります。

で、そんなこと会社には分りきっている、なおかつ今回、ある程度我儘を聞こう、と譲歩した先の事態ですから。態度を硬化させて「妊娠したらとっとと辞めて貰え」という態度になりかねません。

そうなったら、それこそ労働基準監督署に訴えれば、と思ったそこの貴方、社員50人の中小でそんなことをして、針の筵の上で働き続ける覚悟はありますか?まして、この規模で「この社員は職務遂行に支障がある」認定なんて、事実上、経営者の一存です。事務職ですが、地味に力仕事もけっこうあるので、仮に妊娠の経過が非常に順調で母体が健康だとしても、すべての業務に支障が無い、は嘘です。1年休職されれば少ない人数でカヴァーせざるを得ず、残った人がけっこう大変なのは想像出来ます(不可能ではないと見ていますが)。

無理じゃないけど、十分挫けたくなるくらい、大変ですから、そんな展開になったら。

もちろん、種々の制度が本当に適切な保障になっているのか、という問題はある。

だけど、制度が制度としてある以上、抜け穴を通って得をするようなやり方はしないで欲しい。後に続く人間の迷惑になるから。

ここにも何回か書いていますが、私は今の会社に入社する際、「結婚・出産で退職する意思は無いが、どうか」と、経営者に直接問い質して「どうぞ」という回答を得ています。今にして思えば「出任せ言いやがって」という気分ですが、ここでキレても仕方ないので、こつこつと根回しを続けてきました。

入社以来の上司は応援してくれますし、最近は一部の先輩(主として、出産退職された奥様を持つ男性)からも「権利なんだから頑張りなさいよ」と言って貰っていました。やっと、若干の手ごたえを得ていたところなんですよ。

だから私は怒っている。

制度も足りないけど、使う人間にもきちんとしていて欲しい。

厳しいことを言うようですが、彼女の家庭の経済状況や暮らしぶりはある程度知っています。確かに、ジタバタしたいのは分る。だけど、ここでこんな風に足掻くなら、子供はもうすこし待って、もうすこし堅実な生活をして、準備しておくべきだったと思う。

それもまた、親の責任というものだと、私は思いますから。

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コメント

産休後に復職できないこともある。

最近、向かいの会社で起こったことです。
東京が本社で、名古屋と大阪に営業所がある企業が、不況で名古屋営業所を閉めることになり、名古屋営業所の方は大阪営業所に行くことになりました。
ただ事務員の女性正社員で1年の産休を取得していた方は転勤できないので復職できなくなりました。彼女の代わりは派遣社員でしたのでこの方は契約打ち切り、産休の方は産休明け後に退職となるようです。
紫苑さんの同僚の方も最初から1年産休を取りますと宣言していれば問題はないように思います。
日本の法律は性善説が根本に有ります。制度を上手に利用すれば良いのです。1年後に復職するかしないかはその時に決めればいいやと心の中で思っていれば良いのですが、日頃の言動、行動は重要です。
広い意味で考えれば、産休は将来の税金を納めてくれる方を支援することになると思います。

走る魂

こんばんは。

制度を上手く利用すれば…って言えたらどんなに良いことか!
既述のように、私の現在の勤務先には出産退職の慣行がありまして、
私を除く全員が、その前提で入社しています。ですので、もし彼女が
取り逃げの前例を作ったら、女子社員(全部で10数人)の過半数は、
同じ方法を取ると思います。
どう見ても不審ですので、対お役所的に、厄介なことになるでしょう。
(因みにその筋の事務を担当するのは私です)

プラス、彼女の今回の言動で、既婚女子社員全体への風当たりが厳しくなりました。
正直これが1番恐れていたことです。

1年後に復職するか否かはその時に…これは正直、休みの間をカヴァーする
同僚に対して失礼だと思いますよ。前の職場のケースですが、代替要員が入らず、
残った5人で1人分を補っていましたが、彼女は諸事情あって復職できませんでした。
復帰後、子供を預かってくれる予定だった親族の方が体調を崩されたとのこと
だったので、事情は分りますし、そのことに対して怒ったりはしません。でも、
「1年の我慢だから」と色々無理をしていたのは確かですから、ガックリときたのは確か。
更にその後、足りない人数を更にやり繰りして新しい人を教えるのは、かなり大変な
ことですしね。

女性社会とは何かと厄介なのですよ(苦笑)

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