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2008年10月17日 (金)

カラシニコフ銃があるところ

=紛争地帯というか、無法地帯というか。

松本仁一の「カラシニコフ」を読みました。

最初に敢えて言います。著者は朝日新聞の記者です。ということは、左寄りのバイアスが、ことによったらかなり強めにかかっている可能性が高いです(何かのついでに、朝日と読売の同じ記事を見比べてみると面白いですよ~。特に社説) んで、私はインテリ族の常道として左の人間です。だから、耳当たりのいい言葉が並んでいた可能性はある。

でも読んで欲しい。新聞の連載が元なので、とても読みやすいし。

書いてあるのは、カラシニコフ銃にまつわるあれこれ、ではなくて、カラシニコフ銃のある場所で、過去から今までに起こっていること。紛争地帯の、著者の目から見た現実。

因みにカラシニコフというのは旧ソ連で開発された自動小銃で、そのあまりの操作性の良さから、紛争地域で非常に多く使われているものです。なんと、専門知識がなくても15分でメンテ出来るそうな(参考までに自衛隊の銃は2時間)。

そして、そんなに操作性が良いからこそ、幼い子供が攫われて、兵士に仕立てられるという現実が起こってしまった。暴力に脅された人たちが、誰彼構わず武装して、誰も信じられない国になってしまう、ということさえ起こった。

発端はといえば、中卒の軍人だったカラシニコフ氏が、無学な兵士にも簡単に扱えるよう考案した兵器であり、そもそもの開発意欲は、第二次大戦中、ソ連軍の銃がドイツ軍のそれと比べて大きく劣っていたがために、多くの戦友を失ったことから来ているのだとか。

技術士官カラシニコフは真面目に仕事をし、軍人だから造った銃で大儲け、なんてことも当然無くて、今は人並みの年金生活だそうです。それはそれ。そこからはまた、別の人間たちが、してしまったこと。

著者曰く、アフリカの紛争には、天下国家という概念が無いんだそうです。民族だけしかなかったところに、旧宗主国が勝手に国境線を引いた。そしてそこには、「国って何」「人権って何だろう」ということを、最初から学んでいかなければならない人々の手には余る道具があった。というわけで、概念としてはヤクザの縄張り争い程度のことに、大量のカラシニコフ銃が動員される。彼らには我欲しかなく、最低限、自らの属している民族を良くしよう、という思いも無い。誰も信じず自分だけのために独裁政権を敷くから、1人を殺めることで、簡単に国家が転覆出来てしまう。

外界から隔離されて、望むと望まざるとに関わらず、他者と差別化されている、日本人の私には、目から鱗が落ちるような話でした。

そして、思えば当たり前だけど、もうひとつ目から鱗が落ちたのが、著者の別の指摘。「軍人・警察と教師に給料を払えない国は、国家としての体をなしていない」。前者は国民の今現在の身の安全を、後者は国の未来を、蔑ろにしている証拠。なるほど。で、そんな政府にODAを払うくらいなら、現地で必死の努力をしているNGOにでも支援をした方がいい、という論調は、やや朝日臭くはあるけど、私には同意出来る。

平易で短い本ですが、学ぶことの多い書物でもありました。ソマリアの中にある自称独立国家ソマリランドの話も、非常に興味深かったです(ソマリランドはソマリアの内戦に疲れ果て、もう紛争はいい、という人々が作った国ですが、国連の承認を得ていないため、あくまでも自称独立国家だそうです)

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