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2008年9月19日 (金)

新国立劇場バレエ「ドン・キホーテ」

これも過去のビデオのレポートです。

新国立の上演記録より。この映像の最大の見所は、主演のキャスティングですね(笑)。158㎝の都さんと、196㎝のアンドレイ。もはや親子サイズどころの騒ぎじゃない。これきっと、思いついたら笑いが止まらなくなって、発作的にオーダーしたんじゃないかな。みーはー気味のファンがネタとして思い浮かべて遊ぶようなことが、実際に起こってしまったお話です(爆)。

キャスト

キトリ/ドゥルシネア:吉田都  バジル:アンドレイ・ウヴァーロ  ドン・キホーテ:長瀬信夫  サンチョ・パンサ:奥田慎也  エスパーダ:市川透  メルセデス:湯川麻美子  ガマーシュ:逸見智彦  ロレンツォ:田名部正治  ドリアードの女王:大森結城  キューピッド:高櫻あみ

 ワシーリエフ版と比べて全体に物足りなさを感じます。コール・ドが雑多さや生命力に欠けていたし、エスパーダが格好良くなかった。それと、衣装や装置の色彩は、新国立より東京バレエ団の方が好みです。

アンドレイ、この時は本当に、キザな優男ですよね。私は生で見た、お茶目で明るい下町兄ちゃんの役作りの方が、彼らしいおっとりしたところが出ていて好きですが、これもなかなかハマってました。ただ、流石に急造ペアだけあって、多少ノリが悪かったかも。特にリフトの上げ下ろしは、何だか恐々やってるように見えました。密かに楽しみだったタンバリン投げも、何だか大人しかったし(苦笑)。それでもソロになると、ジャンプは高いしぎゅんぎゅん回ってくれて、いつもの彼なんですけど。

都さん。イギリスのダンサーって、脚が強いなーと思うんですが、絶対にこれ見よがしなところは無いですよね。さっぱり、あっさりと、丁寧で狂いの無い端正さを持っている。その辺りが、イギリス特有の上品さの一端なんでしょうか。都さんは、強いと言ってもいいくらいの技術の持ち主ですが、軽やかで可愛らしくて、決して強さを印象付けない。本当に素敵なバレリーナだなと、嬉しくなりました。

 二幕になると、大丈夫だという確信が持てたのか、連携もノッてきます。居酒屋名物のダイビングキャッチなんて、もう胸の辺りで受け止めてました。それとこの場面では、メルセデスの湯川さんが、色っぽい背中を見せてくださいました。ここに出ていた新国立のダンサーの中では、個人的に一番綺麗だったなと思っています。でも通常の版では、エスパーダ&メルセデスの位置づけって本当に曖昧なんですね。キャラクターダンスにしては長々と出るけど、物語にはぜんぜん絡んでこないという…

狂言自殺。ああ、ワシーリエフ版の時の、細かく行き届いた演技が懐かしい。これだと、大げさな顔して剣を刺して倒れちゃうだけですもんね。剣とマントを取って戻ってきた時、キトリの頬に素早くキスをしていく場面なんかは、逆にあっちには無かったから、ちょっと得した気分ですけど。それにしてもあの大きな剣は、アンドレイの日用特注品でしょうか。あれをほかのキャストでやったら、大きすぎて笑える…

 通常ここでジプシーの野営地なんですね。ドン・キホーテの出番を多めに取るというのは、まあ話の設定からいえば筋は通ってますけど。でもなんか寂しかった。結局彼の存在って何なんだろう、と出番が多ければ多いほど考え込んでしまうんですよね。夢の場面は、そこそこの出来上がりで、キューピッドはユニセックスに可愛いんですけど、ピンクのカツラだけは勘弁してください。ドリアードは…日本人キャストで純クラシックの美しさを見せるって難しいですね。その分、都さんの端正さが圧倒的。技術はもとより雰囲気まで綺麗で、可愛らしくて、これもまた理想的な一人のお姫様だと、しみじみ思いました。

 やはりこのバレエの見せ場は三幕。でもエスパーダの衣装、ちょっと色が悪趣味じゃありません?もっと綺麗な色の使い方があるでしょうに…まあそれは置いておくとして。これのグラン・パ・ド・ドゥは、「眠り」と並んで最も好きなもののひとつ。都さん&アンドレイも、本当に楽しそうに踊っていたのが印象的でした。でもこの二人、並んで回ると何かが違うような…イギリスとロシア、それぞれの癖でしょうか?でも何だか「イギリスではバレエってこうやってやるのよ」「そうですか、ロシアではこうなんですよ」って、言う会話が聞こえてきそうで、妙に微笑ましかったかな(笑)。違和感があるほどでもなかったですし。

でもやはり、ダンサーは踊ること、舞台に立つことで学ぶものだし、結びつくものだと、しみじみ思います。リハーサルもきちんとやっている筈なのに、一幕とここでは、都さんとアンドレイの息の合い方が桁違いです。最初はあんなにやり難そうだったリフトもピルエットも、難なくこなれていますし。因みにフィッシュ・ダイブは腰の辺りで止まりました。アンドレイが持ち上げると、いつも床上けっこうな高さで綺麗なんですけど、これが一番高かった。

 アンドレイのソロは、相変わらず豪快なジャンプと鋭い回転で、見所のつるべ打ち!という感じ。いつ観ても惚れ惚れします。都さんは、細かい足技が小気味良いですね。きびきびとしてて可愛い。そして最後のコーダ!これが素晴らしかった!都さんのグラン・フェッテは、私が今まで観てきたものの中で恐らく最速。息を呑むようなスピードで、難なくダブルも入り、軸はもちろん、細くて真っ直ぐで…それでいて、何故か「強い」とか「技術の人だ」と思えてこないのは、都さんの軽やかさ、丁寧さの功徳でしょうね。で、続くアンドレイのグランド・ピルエット。「負けてられるかぁっ!」と思ったか否か、これまた凄まじい勢いで、回りながらスピナーズ・ハイになっていたのではないかと…終わった瞬間の「やった!」という表情、忘れられません。限界ギリギリまでハイテンション。そうそう、やっぱりドン・キはこのクレイジーな明るさ、破天荒さですよね。

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