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2008年5月27日 (火)

K-Ballet「くるみ割り人形」

どうやら私は、熊川哲也とは演出の趣味が合うらしい。面白い!

ポイントは、豪華な装置を背負いつつ、素敵な小芝居をまじえつつ、それでも何よりも踊りが楽しくて、その上話に筋が通っているという。しかもそのすべてが音楽にとっても合っているという。確かにセットだけ見ていても、幼児も飽きないスペクタクルだけど、それ以上にパフォーマンスとして面白い。

熊川版「くるみ」は、ねずみの呪いでくるみ割り人形にされてしまった王子様が、最愛のお姫様(=金平糖の精、役名はマリー姫)を助け出すための冒険に、少女クララが紛れ込む、という展開。

何というかですねぇ・・・初めて「くるみ」というバレエに納得した(ベジャール版は除く)。ライト版の時は、とってつけたような金平糖が解せなかったし、ドロッセルマイヤーの甥という存在も不自然に思えた。クララが金平糖になる演出も、それはそれで不自然な感じがしたし。

でも、この演出にはそういう不自然が無いんですよ。姫と王子の素性は分っていて、冒険の起承転結があって、その中でのクララの役割もはっきりしていて。敢えて言うならドロッセルマイヤーの存在が若干不可解なくらいのもので。その筋が、音楽と絶妙にハマって、ダンスで語られた時の楽しさっていうのは、なかなか得がたいもので。

クララもですが、子供たちはみんなとっても可愛かったです。無邪気であどけない子供というよりは、ちょっと悪戯もするような年代に見えましたけどね。

康村和恵さんのマリー姫は、系統で言ったらオーロラとかライモンダ系の、高貴で無邪気な、存在そのものがお姫様。呪われると無力なんだけど、幸福な時の輝きがとても愛らしくて、どこを切っても一部の隙も無く「お姫様」。

熊川さんの王子は、凛として落ち着いて、ちょっと王様が入っちゃってますが、彼らしく鮮やかでもあり、ちゃんとお姫様に花も持たせられて、堂に入った貴公子ぶりでした。10年くらい前の映像で、彼の「くるみ」を一度観ていますが、その時は「おいおい冗談じゃないよ」と思ったのが、もはや懐かしい。

この2人の華やかなパ・ド・ドゥを頂点に、とにかく踊りの楽しさが満載の演出でもありました。冒頭の子供たちのアンサンブルも楽しかったし、雪の精の踊りはコール・ドが素晴らしい統一感。お菓子の踊りは、アラブがオーソドックスな「妖艶&ミステリアス」、スペインが「きびきび&陽性」で来たと思ったら、中国は人形振りのキャラクターダンス(ショーダンスがちょっと入ってるかも?)、ロシアはコサックの入った男性デュオ、キャンディは男女三人ずつのコケティッシュなパ・ド・シスと、玩具箱をひっくり返したような、色とりどりの楽しさ。玩具の兵隊VSねずみの軍隊も、ちゃんと踊っていたところも素敵でした。

そうそう、ねずみで思い出したけど、あのねずみたちは、動きがショッカーしてたと思う(苦笑) それと、ねずみが投石器を使うでしょ?あれ、石じゃなくてチーズを投げてて、ちゃんと投げたものは回収してました。こういう小ネタ、大好き。

あと、小ネタといえば、最後に王子はクララに敬礼して別れを告げるでしょう?あれも、さりげないけどいい演出ですよね。あくまでもくるみ割り人形として、クララに別れを告げるという。

突き放して言うと、踊ることが大好きで細かいことにまでこだわりたい男声ダンサーが、自分で踊るために振付けた演目かもしれない。で、ライトやワイノーネンのストレートな御伽話が好きな人には、例によって微妙かもしれない。でも、流石に踊ることが大好きな人が遠慮なくやっただけあって、その踊りが半端でない密度とヴァリエーションなんですもの。楽しいったらありゃしない。

それと・・・チャイコフスキーのこの音楽は、やっぱり、悲しくなってしまうくらい美しくて大好きなんだけど、何箇所か、それと踊りがはまりすぎて、泣きたくなる箇所がありました。花のワルツとか、そういう泣けなさそうなところなんですけどね。

そういう色々を含めて、これはとってもいいプロダクションだと思う。

それから・・・この演目の裏MVPは、エレガントで謎めいた雰囲気の、素敵な魔法使いを演じた、ドロッセルマイヤー=キャシディ。彼は意外と役者なのですね。将来、ドン・イホーテなんかが出来るようになるかも。

そして、熊川哲也がなるべく元気なうちに、「白鳥」を観ておくべきだと思う今日この頃なのでした。

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